ネイチャーポジティブ宣言とは:環境省や企業が掲げる新時代目標

ネイチャーポジティブ宣言とは、生物多様性の損失を止めて回復への道を進むことを目指す日本の新たな環境方針です。2023年の策定以降、多くの企業・自治体がこの宣言を支持し、実際の施策や活動で自然資本の保全と回復に取り組んでいます。自然を単に守るだけではなく、積極的に増やし豊かにする社会づくりを目指す点が新時代の潮流です。環境省を中心に多省庁連携で推進され、2030年までの具体的目標も明確化されています。2030年までの日本の主要目標として、陸と海の30%を保全する「30by30」目標が掲げられ、産官学民による広範な連携体制の構築が進められています。

ネイチャーポジティブの理念と国際的な位置づけ

ネイチャーポジティブは、生物多様性の損失を止め、自然を回復軌道に乗せることを目指す新たな経済モデルとして国際的に注目されています。

2020年の国連生物多様性サミットで「リーダーによる自然への誓約」が発表され、2030年までに生物多様性の損失を停止し回復させ、2050年までに自然共生社会を実現する目標が掲げられました。この理念は気候変動の緩和策であるパリ協定の目標とともに、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の重要項目として位置づけられており、日本も2023年に「生物多様性国家戦略2023-2030」を策定、国際的枠組みと整合させながら取り組みを推進しています。

国際的な枠組みとしては、UN生物多様性条約COP15の合意があり、世界各国が生物多様性保全に向けて連携を強め、G7サミットでもネイチャーポジティブの推進が議題となり、自然資本の保護や回復を経済活動の中核に据える動きが加速しています。国内では「生物多様性国家戦略」や「地域生物多様性増進法」などの政策により、自然環境保全と持続可能な利用を法律および行政施策として具体化し、この枠組みの中で、2030年までに陸海の30%を保護する「30by30」目標の推進や、「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」の実行が重要な施策として位置づけられています。

ネイチャーポジティブ経済は、個々の企業や地域が自らの価値創造活動に自然保護を組み込み、バリューチェーン全体で自然環境への負荷を最小化しつつ、製品やサービスを通じて自然の回復に貢献するという新しい経済の在り方を提案しています。

環境保護と経済成長の両立を目指し、持続可能な社会づくりを加速させることが期待されています。この理念は、従来のGDP中心の経済指標を補完し、「包括的富(Inclusive Wealth)」の考え方に基づいて自然資本を経済活動の根幹に据える点で革新的です。今後、ネイチャーポジティブは社会・経済全体の変革を促す重要な柱として、企業や自治体、国際社会で広く推進されていくでしょう。

項目 説明
国際枠組み UN生物多様性条約COP15、G7サミット
国内戦略 生物多様性国家戦略、地域生物多様性増進法
目標例 30by30、ネイチャーポジティブ経済移行戦略

環境省のネイチャーポジティブ経済移行戦略の骨子

環境省の「ネイチャーポジティブ経済移行戦略ロードマップ(2025-2030年)」は、2030年までに自然資本を活用した経済価値で47兆円の創出を目指す中期計画で、この戦略は、企業、金融機関、自治体、消費者を含む幅広いステークホルダーの協力を促し、経済活動における自然資本の役割と影響を正確に評価し持続可能な経済への転換を推進します。

具体的な方向性として、企業のマテリアリティ設定促進があり、企業は自社の自然資本への依存度や影響を評価・統合し、経営判断に反映させることが求められます。重点課題に的確に対応できるようになり、金融機関に対してはTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)基準の導入支援を行い、自然関連リスクの評価と情報開示を促進し、投資判断の質を向上させます。

方向性 具体施策
企業のマテリアリティ設定促進 自然資本への依存と影響の評価統合
金融機関の投資判断支援 TNFD基準導入による自然関連リスク評価
地方公共団体の連携 自然共生サイトの認定と地域活動活性化
国際連携強化 海外技術・資金連携の推進

企業への具体的期待と行動指針

企業には、ミティゲーション・ヒエラルキーという考え方を取り入れ、自然資本に対する負の影響を回避・低減し、正の影響の回復・創出を経営の重要課題として行うことが求められています。自社事業での自然依存・影響を認識し、負荷軽減策を講じるとともに、生態系の復元や持続的資源利用を積極的に推進し、影響や改善効果の定量的な評価を行い透明性を高めることで、ステークホルダーからの信頼を獲得します。

このロードマップは、国の基本戦略「生物多様性国家戦略2023-2030」とも整合し、日本のネイチャーポジティブ経済実現の中核をなす計画であり、多様な主体の協働による持続可能な社会と経済の構築を目指しています。

行動指針 説明
依存・影響の認識 自社事業における自然資本の依存度把握
負の影響回避・低減 事業活動の自然への負荷軽減
ポジティブな関わり強化 生態系の復元や資源の持続的利用推進
定量的評価 影響や改善効果の数値化、透明性強化

地方公共団体と地域コミュニティの役割強化

日本の「地域生物多様性増進法」は、2025年4月1日に施行され、地域の生物多様性を増進するための新たな法制度として重要な役割を果たします。

自治体は地域固有の自然資本に対応した増進活動実施計画を作成し、環境大臣などの主務大臣に申請・認定を受けることで、自然共生サイト(OECM)として登録され、この制度により、民間保全地域や農地などが保全区域に登録され、長期的かつ安定的な自然保護活動が可能となります。

この法制度は、生物多様性条約COP15で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」を背景にしており、2030年までに生物多様性損失の停止と反転を目標とする「ネイチャーポジティブ」の実現を国内で推進するもので、増進活動実施計画には、里地里山の保全、外来生物防除、希少種の保護など具体的な自然保護・回復活動の内容が含まれ、法的手続きのワンストップ化や規制緩和の特例措置も設けられています。

地域内では、住民参加による環境教育や参加型保全活動の活性化が奨励されており、これにより地域住民の環境意識が高まり、生態系の回復や地域活性化に寄与しています。自然共生サイト認定制度は、地域特性を活かした持続可能な環境保全モデルとしての役割を果たし、国全体の生物多様性保護目標達成に寄与すると期待されています。

施策 内容
自然共生サイト認定 民間保全地域や農地等を保全区域に登録
地域計画策定 多様な主体による自然保護計画作成
法的支援 申請・承認手続きワンストップ化
住民参加促進 環境教育と参加型保全活動活性化

私たち消費者・市民ができること

一方、私たち消費者・市民もネイチャーポジティブ社会実現に向けた重要な担い手で、環境に配慮した商品の選択は、環境負荷の低いビジネスを後押しします。

地元の自然保護活動に参加することで、生態系の回復と地域の活性化を促進でき、さらには、食品の無駄を減らすことで資源の節約と温暖化の抑制に貢献し、ゴミの分別やリサイクルを進めることで環境負荷の軽減と資源循環を促進します。これらの市民の行動変革は、地域全体の環境保全活動を支え、企業や行政の取り組みと相乗効果を発揮し、持続可能な社会づくりに欠かせない役割を果たします。

市民行動例 期待される効果
エコ製品の選択 環境配慮型ビジネスの促進
地元自然保護活動参加 生態系の回復と地域活性化
食品の無駄削減 資源節約と温暖化抑制
ゴミの分別・リサイクル 環境負荷軽減と資源循環促進

まとめ:ネイチャーポジティブ経済移行戦略の実現へ全力で

環境省が策定したネイチャーポジティブ経済移行戦略は、日本の自然再生と経済活性を両立させる壮大なビジョンです。2030年までに47兆円もの自然資本市場創出を目指す大胆な計画は、私たちの未来に希望をもたらします。 企業活動の環境配慮、地方自治体の地域連携、そして私たち市民の小さな行動が結びつくことで、この挑戦は成功に近づいていきます。

今こそ「なるほどそうなのか!」と理解したことを心に留め、それぞれができることを始めましょう。自然と共に生きる社会の実現は皆の力があってこそ。未来をより良くする一歩を共に踏み出しませんか?