SDGsトレインは、鉄道そのものの環境性能と、車内外の情報発信力を組み合わせて「走るSDGs教室」として機能する、新しいエコツーリズムのかたちです。 自動車や航空に比べてCO₂排出量の少ない鉄道で移動しながら、地域の自然や文化を学べる旅は、ネイチャーポジティブな観光の入り口になっています。
鉄道がエコな移動手段と言われるワケ
鉄道は、同じ距離を1人運ぶ際のCO₂排出量が、自家用車や航空機に比べて圧倒的に少ない交通手段です。 例えば、「人1人を1km運ぶ」際の排出量は、自家用車の約7分の1、航空の約5分の1にとどまり、都市間輸送全体の中でも、輸送量に比べて排出量の割合が小さいことが示されています。
| 交通手段 | 1人1kmあたりCO₂排出量の目安 | 鉄道比 |
|---|---|---|
| 鉄道 | 約19g | 1倍(基準) |
| バス | 約51g | 約2.7倍 |
| 航空機 | 約109g | 約5〜6倍 |
| 自家用乗用車 | 約147g | 約7〜9倍 |
SDGsトレインとは何か
SDGsトレインとは、鉄道そのものの環境性能と、車内外の情報発信力を組み合わせてSDGsを啓発する「走るキャンペーン列車」で、日本では東急グループや阪急阪神ホールディングスが代表例で、車両のラッピングデザインや車内広告をSDGs一色にしつつ、走行に使う電力も再生可能エネルギーで賄うことで、環境負荷の低減と啓発を同時に実現している点が特徴です。
東急電鉄の「SDGsトレイン 美しい時代へ号」は、その先進事例の一つで、東横線・田園都市線・目黒線など複数路線で運行され、走行にかかる電力を実質的に再生可能エネルギー100%とする仕組みを採用しています。これは、再エネ由来の電力プランや環境価値取引(非化石証書、カーボンオフセットなど)を組み合わせることで、電力使用によるCO₂排出を差し引きゼロとみなすものです。同時に、車内の広告スペースにはSDGs17目標のアイコンや、沿線自治体・企業の具体的な取り組みを紹介するポスターが掲出され、乗客が移動しながらSDGsを学べる構成になっています。
阪急電鉄・阪神電車の「SDGsトレイン 未来のゆめ・まち号」も、同様に省エネ車両と再生可能エネルギー電力を組み合わせた列車で、こちらも車内外をSDGsデザインでラッピングし、節水・省エネ・海洋プラスチック削減など、地域の環境・社会課題に関するメッセージを発信しています。鉄道全線のカーボンニュートラル化を進める取り組みの一環として位置づけられており、「環境に優しい移動手段としての鉄道」を具体的な数字とともに示している点が評価されています。
さらに、これらのプロジェクトは鉄道だけにとどまらず、一部では「SDGsバス」との連携も進んでいます。
再エネ電力を活用した運行や、カーボンオフセット付きの路線バスを走らせることで、鉄道とバスを組み合わせた地域全体の低炭素交通ネットワークを目指しているケースもあり、乗客は、普段の通勤・通学や買い物の移動を通して、自然とSDGsや気候変動対策に触れることができ、「学びながら移動する」体験価値が生まれます。SDGsトレインは単なるラッピング列車ではなく、再生可能エネルギーの活用による実質的なCO₂削減と、市民への継続的な情報発信を組み合わせた社会実験の場です。鉄道会社・自治体・企業が協働し、「低炭素で便利な移動」と「SDGs・ネイチャーポジティブの啓発」を同時に進めるプラットフォームとして、今後も各地域で広がっていくことが期待されています。
| 事例 | 特徴 |
|---|---|
| 東急「SDGsトレイン 美しい時代へ号」 | 全路線の運行電力を実質再エネ100%とした先進事例。 |
| 阪急・阪神「SDGsトレイン 未来のゆめ・まち号」 | 省エネ車両+再エネ電力で運行し、ポスターや車内装飾でSDGsを紹介。 |
| SDGsバスとの連携 | 一部路線では、バスでもカーボンオフセットを組み合わせた取り組みを実施。 |
ネイチャーポジティブな鉄道旅のポイント
ネイチャーポジティブな旅では、「移動のCO₂を減らす」だけでなく、訪れた地域の自然や文化を守り、回復につながる行動をとることが求められます。 鉄道での移動にエコツーリズムを組み合わせることで、環境教育や地域経済への貢献も含めた多面的な効果が期待できます。
| 旅づくりの視点 | 具体的な工夫 |
|---|---|
| 低炭素な移動 | 長距離は鉄道を優先し、現地ではバス・自転車・徒歩を活用。 |
| 自然と文化の学び | SDGsトレインや地域の展示を通じて、生物多様性や伝統産業を学ぶ。 |
| 地域経済への貢献 | 地元の宿・飲食店・体験コンテンツを選び、地域内でお金を循環させる。 |
| 保全活動との連携 | 植樹や清掃など、保全プログラム付きツアーへの参加。 |
鉄道会社・観光地のSDGs・環境配慮
鉄道事業者や観光施設も、エネルギー効率の高い設備や再エネ導入、サステナブルツーリズムの推進を進めています。 例えば、観光列車と地域のエコツアーを組み合わせたプランや、観光名所での省エネ・ごみ削減施策などが、旅の体験そのものを「学びの場」に変えています。
| 主な取り組み | 内容 |
|---|---|
| 省エネ・再エネ導入 | 高効率車両・LED照明・回生ブレーキ+再エネ電力利用など。 |
| サステナブルツーリズム | 鉄道+ハイキング+地元食材の体験型ツアーを企画。 |
| ごみ削減・リサイクル | 車内での分別、リユースカップや紙ストローの導入など。 |
| 情報発信 | 駅や車内でSDGs・環境保全のパネル展示、スタンプラリーなどを実施。 |
旅行者ができるエコな鉄道旅
旅行者自身の選択も、ネイチャーポジティブな移動と観光を支える重要な要素です。 旅の計画段階から、「移動手段」「宿泊」「アクティビティ」を環境・地域への配慮で選ぶことで、SDGsトレインのメッセージを「自分ごと」に変えていくことができます。
| 行動アイデア | ポイント |
|---|---|
| 鉄道優先のルート設計 | 飛行機やレンタカーよりも、在来線・新幹線・観光列車を軸に旅程を組む。 |
| マイボトル・マイバッグ持参 | 自販機やコンビニ利用時の使い捨てプラを削減。 |
| 地元ガイド・ツアーの利用 | 里山散策や川下りなど、自然と文化を学べる少人数エコツアーを選ぶ。 |
| オフピーク旅行 | 混雑を避けることで、交通インフラや自然への負荷を分散。 |
地域まちづくりとSDGsトレインの相乗効果
SDGsトレインは、単なるラッピング電車ではなく、沿線の自治体・企業・市民団体との連携を通じて、まちづくりのプラットフォームとしても活用されています。 イベント列車やスタンプラリー、沿線のサステナブルスポットをめぐる企画などを通じて、地域のSDGs活動への参加の入口が広がっています。
| まちづくりの視点 | SDGsトレインとの関わり |
|---|---|
| 沿線価値の向上 | SDGsや環境配慮を打ち出すことで、居住・観光の魅力を高める。 |
| 市民参加の促進 | 清掃活動やワークショップなど、沿線イベントへの参加機会を創出。 |
| 教育・学習の場 | 学校の社会科見学や社員研修の「移動教室」として活用。 |
| 地域ブランド強化 | 環境先進エリアとしてのイメージづくりに貢献。 |
まとめ:SDGsトレインで始めるネイチャーポジティブな旅
鉄道はもともとCO₂排出量の少ない移動手段であり、SDGsトレインのような取り組みによって、その価値が「学び」と「地域貢献」にまで広がっています。
旅のルートを鉄道中心に選び、現地では歩く・自転車・公共交通でめぐりながら、地域の自然や文化に敬意を払う行動をとることで、一人ひとりがネイチャーポジティブな観光の担い手になれます。 次の旅の計画から、SDGsトレインやエコ志向の鉄道旅を取り入れて、移動そのものを地球と地域にやさしい体験へと変えていっていただければと思います。